事務所開きの神事とは?当日の流れと式次第の意味、参列する人がすること

白い紙垂を付けた榊の枝が、木の台に置かれている様子

事務所開きの神事は、新しい事務所で仕事を始める前に、その場所を祓い清め、神様に完成をお知らせし、そこで働く人の無事と事業の繁栄を願うお祭りです。神職に事務所まで来てもらう出張の祭典として受け付けている神社があります。

作法を覚えて行く必要はありません。たとえば神奈川県葉山町の森戸神社は、祭典は約30分で、神職が作法を説明しながら進めるので参列者はそれに合わせればよい、と案内しています。

この記事では、当日の流れと、式の一つひとつにどんな意味があるのかを紹介します。神社への頼み方や初穂料の目安は、会社・お店のお祓い|費用の目安と頼み方にまとめています。

事務所開きの神事とは

栃木県小山市の間々田八幡宮は、出張で行う祭典の一つとして事務所開きを挙げ、次のように説明しています。

事務所が完成して事業を開始する前に、事務所内を祓い清め、神様に完成の奉告をし、そこで就業する人の安全や健康と事業のますますの繁栄をご祈願するお祭りです。

祓い清めることは含まれていますが、それだけの儀式ではありません。新しい場所ができたことを神様に報告し、これからの仕事を見守ってもらうよう願う、始まりを祝う神事です。

式典としての「事務所開き」「開所式」とは別のもの

「事務所開き」や「開所式」という言葉は、神事ではない式典を指すこともあります。選挙事務所の事務所開きのように、挨拶や来賓の紹介をする集まりがその例です。神事のあとに続けて式典を行うこともあります。この記事で扱うのは、神職が執り行う神事のほうです。

清祓(きよはらえ)という呼び方

事務所開きの神事は、清祓という言葉を付けて呼ばれることがあります。廣田神社(青森市)は、事務所開きの記録に「事務所開きの清祓い」という題を付けています。

清祓は「きよはらえ」と読み、「きよはらい」ともいいます。清めのための祓のことで、小学館の日本大百科全書では、社殿の造営が完成したときなどに神職が社殿や調度を祓い清める儀礼も指すと説明されています。平凡社の世界大百科事典は、新築した家に入居する前に祓をすることも清祓と呼ぶとしています。新しくできた場所を使い始める前に祓い清めるという点で、事務所開きの清祓も同じ考え方です。

神社によって呼び方と分け方が違う

同じような祭典でも、神社ごとに名前や区切り方が違います。間々田八幡宮は、建物が完成して入居するときの「竣工祭」、新年の「仕事始め祈願祭」、新しく神棚をお祀りするときの「神棚祭」を、事務所開きとは別に立てています。東京都練馬区石神井台の氷川神社は、出張祭典の一覧に「事務所開き」と並べて「神棚清祓い」を挙げています。

予約のときは、呼び名にこだわらず「新しい事務所で仕事を始める前に、お祓いと祈願をお願いしたい」と目的を伝えれば話が通じます。

当日の流れ

森戸神社は、出張祭典の当日の流れを5つの段階で公開しています。

  1. 祭典の現場準備
  2. 送迎
  3. 祭場の鋪設(設営)
  4. 祭典
  5. 片付け

送り迎えは、祭壇や祭具を一緒に運ぶため、依頼する側が車を出すよう求める神社があります。送迎の有無や時間は神社によって違うので、予約のときに確かめておきます。

神職が着くまでに整えておくこと

森戸神社は、事務所祓い・家祓いの準備として、清掃、祭場にするスペースの確保、準備品の確認を挙げています。祭壇を置く場所と、参列する人が並ぶ場所をどのくらい取ればよいかは、予約のときに聞いておくと当日迷いません。

森戸神社の案内では、お供え物は神職が着いてから祭壇に盛り付けるので、それまでは一か所にまとめて仮置きしておきます。氷川神社も、祭壇への盛り付けは神主が行うと案内しています。

お供えを自分たちで用意する意味

お供えの品を神社が用意してくれるところもありますが、氷川神社は「祈願主様にお供え物をご用意頂く事にとても意味があります」として、祈願する側が用意するよう案内しています。

お供えは、神様をお迎えする側のもてなしだと考えると分かりやすいと思います。米や酒、塩、水など、自分たちで選んで持ち寄ったものを神前に並べるところまでが、お祭りの一部です。品目や量は神社ごとに違うので、予約のときに確認してください。

式次第と、それぞれの意味

森戸神社は、一般的な出張祭典の式次第として次の9つを挙げています。順番や儀式の数は神社によって違います。

  1. 修祓(しゅばつ)
  2. 降神の儀(こうしんのぎ)
  3. 献饌(けんせん)
  4. 祝詞奏上(のりとそうじょう)
  5. 祭典別神事(祭典ごとの儀式)
  6. 玉串奉奠(たまぐしほうてん)
  7. 撤饌(てっせん)
  8. 昇神の儀(しょうしんのぎ)
  9. 神酒拝戴(しんしゅはいたい)

並びだけ見ると難しそうですが、清めて、お迎えして、願いを伝えて、お送りする、という流れで見ていくと、それぞれの意味がつながります。

清める(修祓)

最初に行うのが修祓で、森戸神社は「お清めお祓いの儀式」と説明しています。神職が、紙や麻の垂れを付けた祓いの道具を左、右、左と振る場面です。

神道の祓(はらえ)は、罪や穢れ、災いを取り除き、心と体を神様の前に出られる状態に戻すことだと説明されます。國學院大學の用語集では、修祓は祭典の前に行う祓とされています。神様をお迎えする前に、まず場と人を整えるわけです。

お迎えする(降神の儀・献饌)

降神の儀では、神様を祭場にお招きします。森戸神社の説明では、お招きする先は神籬(ひもろぎ)です。

神籬は、祭りのために一時的に設ける神様の座のことです。國學院大學の資料によると、中央に幣(へい)や紙垂(しで)を付けた榊を立て、そこを神様がやどる依り代とします。ふだんは机や棚が並ぶ事務所が、この時間だけは神様をお迎えする祭場になります。

國學院大學の用語集では、神様をお迎えするときは斎主が言葉を唱え、警蹕(けいひつ)と呼ばれる声で神様のおいでを知らせると説明されています。警蹕が行われる祭典では、降神の儀と昇神の儀でその声を聞くことになります。

神様をお迎えしたら、献饌でお供え物を差し上げます。用意したお米やお酒が、ここで神前に供えられます。

願いを伝える(祝詞奏上・玉串奉奠)

祝詞奏上では、神職が神様に、願い主の名前と祈願の内容を申し上げます。事務所開きであれば、新しい事務所ができたことの報告と、働く人の安全や事業の繁栄を願う言葉になります。

祝詞は古い言い回しの言葉で書かれています。日本には、言葉そのものに力が宿るという言霊(ことだま)の考え方があり、正しく美しい言葉は良いことを招くと考えられてきました。祝詞の言葉を考えるうえでも、言葉に力が宿るという言霊の考え方は一つの手がかりになります。

玉串奉奠では、参列者が玉串を神前に供えて拝礼します。玉串は、榊などの枝に紙垂などを付けたものです。神職が祝詞で伝えた願いに、参列する一人ひとりが自分の気持ちを重ねる場面だといえます。

お送りする(撤饌・昇神の儀)

撤饌でお供え物を下げ、昇神の儀で神様に元の御座へお戻りいただきます。神様は祭りのあいだだけ神籬においでになる、という考え方なので、お迎えした神様は最後にお送りします。國學院大學の用語集では、お送りするときもお迎えのときと同じ形で行うと説明されています。神籬は一時的な座なので、祭りが終われば片付けます。

お神酒をいただく(神酒拝戴)

最後に、神前に供えたお神酒を参列者でいただきます。森戸神社はこれを、神様の御恵みを心と体にいただく儀式だと説明しています。

参列する人がすること

参列する人がすることは多くありません。森戸神社の案内では、祭典の主祭者を先頭に並び、神職が作法を説明しながら進めるので、参列者はその説明に合わせて作法を行います。

  • 玉串奉奠:廣田神社が2011年に執り行った事務所開きでは、一人ひとりが丁寧に拝んでいたと記録されています。玉串の持ち方や拝礼のしかたにも作法がありますが、細かな部分は神社によって違います
  • 神酒拝戴:お神酒をいただきます。車を運転する人やお酒を飲めない人がいるときは、どうすればよいか予約のときに神社に聞いておくと安心です

祭典が終わったあとについて、氷川神社は、人数分の紙コップを用意しておくと乾杯ができると案内しています。

神棚を設けて神様をお迎えする

事務所開きに合わせて、新しく神棚を設ける会社もあります。廣田神社は、2011年に事務所開きの清祓いを執り行った日の記録に、次のように書いています。

個人の住宅と同様、商売に関しても新たに事務所を設ける際には神棚を設置し、事務所を祓い清めて神様をお呼びすることで、これからの社運隆昌と社員健勝を祈念します。

神棚は、神社からいただいたお札をお祀りし、日々手を合わせる場所です。祭典の間だけの神籬と違って、神棚はその後も事務所に残ります。

神棚を設けるかどうかは、会社の考え方しだいです。設けるつもりがあるなら、予約のときに神社に伝えておくと、当日の段取りやお札のことを相談できます。

神事そのものは一日で終わりますが、神棚を設けた会社では、そこで手を合わせる日々が続きます。廣田神社の2011年の記録に出てくる会社は、ほかの事務所にも神棚を設け、毎月一日に全員そろって拝んでいたそうです。

依頼する前に確かめておきたいこと

事務所開きの式次第や神棚の設け方、必要な準備は、神社や祭典の内容によって異なります。ここで紹介した流れを目安にしながら、実際の進め方は依頼する神社に確認してください。初穂料や依頼の流れ、当日の服装は、会社・お店のお祓い|費用の目安と頼み方で紹介しています。

まとめ

事務所開きの神事は、新しい事務所を祓い清め、神様に完成をお知らせして、働く人の無事と事業の繁栄を願うお祭りです。清祓という言葉を付けて呼ばれることもあります。

当日は、清めて、お迎えして、願いを伝えて、お送りする、という流れで進みます。作法は、神職の説明があればそれに合わせれば足ります。

参考資料